更年期女性の脂質異常:なぜコレステロールが上がるのか

女性ホルモンの減少が引き起こす体の変化と対策

更年期を迎えると、多くの女性が健康診断でコレステロール値や中性脂肪値の上昇を指摘されるようになります。

「今まで正常だったのに、なぜ急に?」と疑問に思う方も多いでしょう。

実は、この変化には女性ホルモンが深く関わっているのです。

目 次

女性ホルモン(エストロゲン)の保護作用

エストロゲン低下

閉経前の女性は、男性と比較して心血管疾患のリスクが低いことが知られています。

その理由の一つが、エストロゲンの持つ脂質代謝への保護的作用です。

🔸エストロゲンは以下のような働きをしています。

🔹LDL(悪玉)コレステロールの低下
エストロゲンは肝臓にあるLDL受容体の数を増やすことで、血液中のLDLコレステロールを効率的に取り込み、血中濃度を低く保ちます。

🔹HDL(善玉)コレステロールの上昇
エストロゲンはHDLコレステロールを増加させ、血管壁に蓄積したコレステロールを回収する働きを助けます。
これにより動脈硬化を予防します。

🔹中性脂肪の代謝改善
エストロゲンは脂肪の分布や代謝全般に影響を与え、健康的な脂質バランスを維持します。

動脈硬化

💡 コラム:動脈硬化の本当のメカニズム

「コレステロールが高いから動脈硬化になる」と思われがちですが、実は少し違います。

動脈硬化は、まず血管の内側が傷ついたり炎症を起こしたりすることから始まります。

高血圧、喫煙、ストレス、糖尿病などが血管を傷つける原因です。

傷ついた血管にコレステロール(特に酸化したLDL)が入り込み、そこに免疫細胞が集まって炎症が進むことで、動脈硬化のプラーク(こぶ)ができていきます。

つまり、コレステロールは「原因」というより「悪化させる因子」なのです。

エストロゲンが動脈硬化を予防できるのは、脂質を改善するだけでなく、血管を保護し炎症を抑える作用があるからです。

更年期以降はこの保護作用が失われるため、血管を傷つけない生活習慣がより重要になります。

更年期に起こる脂質代謝の変化

原因閉経前後になると卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌が急激に減少します。

このホルモン環境の変化により、脂質代謝にも大きな影響が現れます。

🔹コレステロール値の上昇
エストロゲンの保護作用が失われることで、LDLコレステロールは平均15〜20%上昇します。

一方、HDLコレステロールは低下する傾向にあります。

さらに、小型高密度LDL(より動脈硬化を起こしやすいタイプ)が増加することも分かっています。

🔹中性脂肪の増加
エストロゲン低下により、中性脂肪も上昇しやすくなります。

🔹体脂肪分布の変化
更年期前は皮下脂肪型の肥満パターンが多いのに対し、更年期以降は内臓脂肪型へとシフトします。

内臓脂肪の増加はインスリン抵抗性を悪化させ、さらなる脂質異常を促進する悪循環を生み出します。

心血管疾患リスクの上昇

増加、上昇これらの脂質代謝の変化により、更年期以降の女性は動脈硬化や心血管疾患のリスクが急上昇します。

閉経前は女性ホルモンの保護作用により、女性の心血管疾患リスクは男性よりも低く保たれていますが、閉経後はこの保護作用が失われます。

その結果、60代以降になると男女の心血管疾患リスクの差は縮小していきます。

今日からできる対策

対策

更年期以降の脂質異常症や動脈硬化を予防するために、以下のような対策が有効です。

🔸生活習慣の見直し

  • バランスの良い食事を心がける(飽和脂肪酸を控え、魚や植物油などの不飽和脂肪酸を積極的に摂取)
  • 定期的な運動を習慣にする(週150分以上の中等度運動が推奨されています)
  • 適正体重を維持する

🔸女性ホルモン様物質の活用

  • 大豆イソフラボンなどの植物性エストロゲン(フィトエストロゲン)を含む食品の摂取(大豆製品、納豆、豆腐など)
  • 腸内環境を整えることで、イソフラボンから女性ホルモン様作用を持つエクオールの産生を促進
  • 腸内細菌のバランスを整えるため、発酵食品や食物繊維を積極的に摂取

🔸定期的な健康管理

  • 年に一度は健康診断を受け、脂質検査の結果をチェックする
  • 数値の変化に早めに気づき、対応することが大切

🔸医学的管理

  • 必要に応じてスタチンなどの脂質降下薬による治療
  • ホルモン補充療法(HRT)は、更年期症状や個別のリスクに応じて医師と相談

まとめ

まとめ更年期女性のコレステロールや中性脂肪の上昇は、エストロゲンの減少による自然な身体の変化です。

しかし、放置すると動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めてしまいます。

定期的な健康診断で自分の状態を把握し、生活習慣の改善や必要に応じた医学的治療を行うことで、健康的な更年期以降の生活を送ることができます。

気になる症状や数値の変化があれば、早めにかかりつけ医に相談しましょう。


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