【薬の副作用】漢方薬と筋肉症状|甘草に潜むリスク

「天然=安全」の誤解を解く
漢方薬の7割に含まれる甘草のリスク

前回の記事では、エナジードリンクという身近な製品に潜むカフェインのリスクについてお伝えしました。

今回も「身近な製品のリスク」というテーマを継続し、多くの方が「安全」と考えている漢方薬に焦点を当てます。

特に注目するのは、漢方薬の約7割に含まれる「甘草(カンゾウ)」という生薬です。

この甘草が、実は筋肉症状を引き起こす可能性があることをご存じでしょうか。

目次

漢方薬=安全、ではない

医師からの説明

「漢方薬は天然成分だから安全」「西洋薬と違って副作用がない」──こうした認識をお持ちの方は少なくありません。

確かに漢方薬は長い歴史を持ち、適切に使えば優れた効果を発揮します。

しかし、天然由来であることと副作用がないことは別の話です。

漢方薬も医薬品である以上、副作用のリスクは存在します。

その代表例が、今回取り上げる「甘草による筋肉症状」です。

甘草とは?どこに含まれているのか

?マークの女性

甘草は、マメ科の植物の根から得られる生薬で、多くの漢方薬に配合されています。

その理由は、甘草が持つ以下のような作用にあります。

  • 抗炎症作用
  • 鎮痛作用
  • 去痰作用
  • 他の生薬の調和作用

漢方薬エキス製剤の約7割に甘草が含まれていると言われており、例えば以下のような処方に配合されています。

・葛根湯(風邪薬)
・小柴胡湯(肝機能改善など)
・芍薬甘草湯(筋肉のけいれん)
・甘草湯(咳止め)

市販の風邪薬や胃腸薬にも甘草を含むものが多く、私たちが思っている以上に身近な存在なのです。

甘草が筋肉症状を引き起こすメカニズム

メカニズム(仕組み)甘草の主成分であるグリチルリチン酸が、体内で以下のような連鎖反応を引き起こします。

ステップ1:酵素の阻害

グリチルリチン酸が、腎臓に存在する「11β水酸化ステロイド脱水素酵素2型(11βHSD2)」という酵素の働きを阻害します。

ステップ2:コルチゾールの蓄積

通常、この酵素は副腎皮質ホルモンの一つである「コルチゾール」を不活性型に変換する役割を担っています。

酵素が阻害されると、腎臓でコルチゾールが蓄積します。

ステップ3:ミネラルコルチコイド作用

蓄積したコルチゾールが、本来「アルドステロン」という別のホルモンが結合すべき受容体に作用してしまいます。

その結果、以下のような変化が起こります。

  1. ナトリウムの再吸収が促進される
  2. カリウムの排泄が増加する
  3. 体内のカリウムが失われる(低カリウム血症)

ステップ4:筋肉症状の出現

低カリウム血症が進行すると、筋肉の正常な機能が障害され、以下のような症状が現れます。

  • 筋力低下
  • 筋肉痛
  • 脱力感
  • こむら返り(筋肉のけいれん)
  • 重症の場合:四肢麻痺や横紋筋融解症

この一連の反応は「偽性アルドステロン症」と呼ばれ、甘草による代表的な副作用として知られています。

どんな人がリスクが高い?

安全とリスク

甘草による筋肉症状のリスクは、以下のような条件で高まります。

  1. 長期服用
    数週間から数ヶ月の継続使用で発症リスクが上がります。

  2. 高用量の使用
    甘草を含む複数の漢方薬を併用している場合は注意が必要です。

  3. 高齢者
    加齢により腎機能が低下していると、カリウムの排泄がさらに促進されやすくなります。

  4. 他の薬剤との併用
    利尿薬など、低カリウム血症を引き起こしやすい薬との併用は特に危険です。

注意すべき症状

チェックリスト

以下のような症状が現れた場合は、甘草による副作用の可能性を考慮し、速やかに医師や薬剤師に相談してください。

  • 手足の脱力感
  • 筋肉痛、特に理由のない筋肉痛
  • こむら返りが頻繁に起こる
  • 手足のしびれ
  • むくみ
  • 血圧の上昇

これらの症状が軽度であっても、放置すると重症化する可能性があります。

石鹸や化粧品に含まれるグリチルリチン酸は大丈夫?

疑問に思う

「グリチルリチン酸が危険なら、化粧品や石鹸に含まれているものも心配」と思われる方もいるかもしれません。

結論から言うと、外用(皮膚に塗る)の場合は心配ありません。

グリチルリチン酸は、その抗炎症作用から薬用化粧品や薬用石鹸、シャンプー、歯磨き粉などに広く使用されています。

しかし、皮膚から吸収される量は極めて少なく、20年以上の使用実績の中で重大な副作用は報告されていません。

問題となるのは、あくまで経口摂取(飲む場合)です。

安全に漢方薬を使うために

ポイント漢方薬を安全に使用するためのポイントをまとめます。

  • 医師・薬剤師に相談する
    市販の漢方薬であっても、長期使用する場合は専門家に相談しましょう。

  • 併用薬を必ず伝える
    他に服用している薬やサプリメントがある場合は、必ず伝えてください。

  • 自己判断で量を増やさない
    「効果が弱い」と感じても、勝手に服用量を増やさないようにしましょう。

  • 定期的な血液検査を
    長期服用する場合は、カリウム値などを定期的にチェックすることが理想的です。

  • 症状が出たら中止を
    筋肉症状や血圧上昇などの兆候が現れたら、すぐに服用を中止し医療機関を受診してください。

まとめ

まとめ

  • 甘草は漢方薬エキス製剤の約7割に含まれる
  • 低カリウム血症による筋症状:筋力低下、筋肉痛、脱力感など
  • 外用(化粧品など)では重大な副作用の報告なし
  • 症状が出たら速やかに医療機関へ相談を

漢方薬は「天然=安全」ではなく、医薬品として適切な注意が必要です。

特に甘草を含む漢方薬は、長期使用により低カリウム血症を介した筋肉症状を引き起こす可能性があります。

これは漢方薬を否定するものではありません。むしろ、正しい知識を持つことで、より安全に、効果的に漢方薬を活用できるようになります。

「自然だから大丈夫」という思い込みを手放し、どんな薬でも「使い方次第」という認識を持つことが大切です。

次回第7弾では、第3弾の記事「薬の副作用で口や手足が勝手に動く?知っておきたいこと」に書かれている遅発性ジスキネジアについてのスピンオフ記事です。
お楽しみに。


本記事は情報提供を目的としており、医学的アドバイスの代わりとなるものではありません。個別の症状や薬の使用については、必ず医師・薬剤師にご相談ください。


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