薬の副作用で口や手足が勝手に動く?知っておきたいこと

精神科の薬や吐き気止めを飲んでいる方へ

「薬を飲んでいたら、口が勝手に動くようになった」
「手足が自分の意思とは関係なく動いてしまう」
――こうした症状に悩まされている方はいませんか?

それは「遅発性ジスキネジア」という薬の副作用かもしれません。

聞き慣れない名前ですが、実は意外と多くの方に起こりうる問題です。

この記事では、この副作用について一般の方にも分かりやすく解説します。

目 次

遅発性ジスキネジアとは?

?マークの女性

遅発性ジスキネジアは、特定の薬を長期間服用することで起こる副作用の一つです。

医学的には「錐体外路症状」と呼ばれる神経系の異常の一種で、自分の意思とは関係なく体が動いてしまう「不随意運動」が主な症状です。

「遅発性」という名前の通り、薬を飲み始めてすぐではなく、数ヶ月から数年経ってから症状が現れるのが特徴です。

最も大きな問題は、薬をやめた後も症状が続くことがあるという点です。

場合によっては、症状が改善しにくく、長期間続いてしまうこともあります。

 💡 コラム:「不随意運動」とは?

私たちは普段、「手を動かそう」「歩こう」と思って体を動かしています。
これが「随意運動」です。

一方、「不随意運動」は、自分の意思とは関係なく体が勝手に動いてしまうことを指します。

例えば:

口がモグモグと動いてしまう
舌が勝手に出てしまう
手足が意図せず動く

「止めよう」と思っても止められないのが特徴で、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

どんな薬が原因になるの?

原因

遅発性ジスキネジアを引き起こす可能性のある薬には、以下のようなものがあります。

1. 抗精神病薬

統合失調症や双極性障害の治療に使われる薬です。

種類内容
定型抗精神病薬古いタイプの薬で、発症率は約30%と高めです
非定型抗精神病薬比較的新しい薬で、発症率は約20%とやや低めですが、それでも注意が必要です

2. 制吐剤(吐き気止め)

・メトクロプラミド(プリンペラン®など)
・胃腸の症状や吐き気の治療でよく使われます

3. その他の薬

・ベンゾジアゼピン系(睡眠薬や抗不安薬)
・抗てんかん薬
・抗うつ薬

これらの薬を服用している方全員に起こるわけではありませんが、リスクを知っておくことが大切です。

どんな症状が出るの?

疑問に思う

遅発性ジスキネジアの症状は人によって異なりますが、代表的なものには以下があります。

部位症状
口や顔の症状口をモグモグと動かしてしまう
舌が勝手に出たり、左右に動いたりする
口をすぼめたり、突き出したりする
頬を膨らませる
まばたきが増える
顔をしかめる
手足や体の症状指や手が勝手に動く、手指のくねくね動く動き
足をバタバタさせる
体が揺れる
骨盤の前後運動
首が回る
その他の症状呼吸困難
呼吸が不規則になる
声が出しにくくなる

これらの動きは自分の意思では止められないのが特徴で、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。

どんな人がなりやすいの?

遅発性ジスキネジアになりやすい人には、いくつかの特徴があります。

🔸主なリスク因子

リスク因子説明
高齢者年齢が高いほどリスクが上がります
女性男性よりも女性の方がなりやすい傾向があります
長期服用薬を飲む期間が長いほどリスクが高まります
その他糖尿病がある
脳の病気がある
アルコールや薬物の使用歴がある

なぜ気づかれにくいのか?

不安感遅発性ジスキネジアは、実は多くの方が気づかないまま過ごしている可能性があります。

特に日本では睡眠薬や抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)を長期服用している方が多く、潜在的な患者数はかなり多いと考えられます。

気づかれにくい主な理由

  1. 症状が徐々に現れる
    ・急激に症状が出るわけではないため、本人も家族も変化に気づきにくい
    ・「いつの間にか口が動くようになっていた」というケースが多い

  2. 「年のせい」と思ってしまう
    ・特に高齢者に多い副作用のため、老化現象と勘違いされやすい
    ・「年を取ったから仕方ない」と諦めてしまう

  3. 「癖」や「無意識の動き」と思われる
    ・口をモグモグ動かす、舌を出す、などの動きが「癖」に見える
    ・周囲も「そういう癖なんだな」と思ってしまう

  4. 病名が知られていない
    ・「遅発性ジスキネジア」という言葉自体を知らない人が多い
    ・症状があっても、それが薬の副作用だと結びつかない

  5. 軽い症状から始まる
    ・最初は小さな動きから始まるため、見過ごされやすい
    ・気づいた時には症状が進行していることも

こんな症状はありませんか?

以下のような症状に心当たりがある方は、一度医師に相談してみましょう。

  • 家族や友人から「口が動いている」と指摘された
  • 鏡を見たら、無意識に口や舌が動いていた
  • 以前はなかった手足の動きが出てきた
  • 写真や動画を見返したら、変な動きをしていた

「もしかして?」と思ったら、それは体からのサインかもしれません。

予防が何より大切!

予防遅発性ジスキネジアは、一度発症すると治療が難しいことが多いため、予防がとても重要です。

予防のためにできること

  1. 定期的な診察を受ける
    ・薬を飲んでいる間は、定期的に医師の診察を受けましょう
    ・小さな変化でも医師に報告することが大切です

  2. 必要最小限の量で
    ・医師と相談しながら、必要最小限の量で治療を行いましょう

  3. 長期間の服用には注意
    ・本当に必要な期間だけ服用するようにしましょう
    ・定期的に服用の継続が必要か見直すことが重要です

  4. 早期発見
    ・「口が勝手に動く」「手足が変な動きをする」などの症状に気づいたら、すぐに医師に相談しましょう
    ・早期に対応することで、症状の悪化を防げる可能性があります

もし症状が出たら?

遅発性ジスキネジアが疑われる症状が出た場合、絶対に自己判断で薬をやめないでください。急に薬をやめると、別の問題が起こる可能性があります。

🔸必ずすべきこと

  1. すぐに医師に相談する
    どんな症状が、いつから、どのように出ているか伝えましょう

  2. 医師の指示に従う
    薬の変更や減量は、必ず医師の指導のもとで行います

  3. 症状を記録する
    症状がいつ、どのように出るか記録しておくと診察時に役立ちます

まとめ

まとめ遅発性ジスキネジアは、特定の薬を長期間服用することで起こる可能性のある副作用です。

高齢者や女性、長期服用者はリスクが高く、定型抗精神病薬では約30%、非定型抗精神病薬では約20%の確率で発症するとされています。

最も重要なのは予防です。

定期的な診察を受け、少しでも気になる症状があれば早めに医師に相談しましょう。

薬は病気を治すために必要なものですが、副作用のリスクも知っておくことが大切です。

医師と良好なコミュニケーションを取りながら、安全な治療を続けていきましょう。


注意事項
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個々の症状や治療については、必ず医師にご相談ください。


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