更年期の手の不調【メノポハンド】を理解して対処する
症状チェックから治療法まで完全ガイド
朝起きたときに手がこわばる、指が曲げにくい、手がむくんでいる――こんな症状に心当たりはありませんか?
更年期を迎えた女性の多くが経験するこれらの手の不調は、「メノポハンド」と呼ばれています。
この記事では、メノポハンドとは何か、なぜ起こるのか、どう対処すればよいのかを、わかりやすく解説します。
目 次
メノポハンドの定義
メノポハンドは、2022年に日本手外科学会が命名・提唱した概念です。
「更年期の手」を意味する英語「menopausal hand(メノポーザルハンド)」を略したもので、更年期前後の女性に多く見られる手の不調を総称しています。
それまでは個別の疾患名で呼ばれていた症状を、更年期に関連する手の不調として包括的に捉えることで、早めの治療や対処を促すために提唱されました。
主な症状
メノポハンドの代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- 手指のこわばり(特に朝起きたとき
- 手指の関節の痛みや腫れ
- 手のむくみ
- 握力の低下
- 指の曲げ伸ばしがしにくい
- 手のしびれ
これらの症状は、日常生活に支障をきたすこともあり、放置すると悪化する可能性があります。
メノポハンドは、さまざまな疾患の総称です。
具体的には以下のような病気が含まれます。
| 腱や腱鞘の疾患 | 症状・説明 |
|---|---|
| ばね指(弾発指) | 指を曲げ伸ばしする際にカクンとバネのような引っかかりが起こる症状です。 |
| ドケルバン病 | 親指側の手首に痛みが出る腱鞘炎の一種です。 |
| 神経の圧迫による疾患 | 症状・説明 |
|---|---|
| 手根管症候群 | 手首の手根管という部分で正中神経が圧迫され、親指から薬指の親指側半分にしびれが出ます。 |
| 肘部管症候群 | 肘の内側で尺骨神経が圧迫され、薬指や小指にしびれが出やすくなります。 |
| ギヨン管症候群 | 手首の小指側で尺骨神経が圧迫される疾患です。 |
| 胸郭出口症候群 | 首から腕への神経や血管が圧迫され、腕全体や手にしびれが出ることがあります。 |
| 頸椎症性神経根症 | 首の骨や椎間板の変性により神経根が圧迫され、手にしびれが放散します。 |
| 関節の疾患 | 症状・説明 |
|---|---|
| 変形性指関節症 | ・ヘバーデン結節: 指の第一関節(DIP関節)に起こる変形性関節症 ・ブシャール結節: 指の第二関節(PIP関節)に起こる変形性関節症 |
| 関節リウマチ | 自己免疫疾患の一つで、更年期に発症することもあります。 |
| 母指CM関節症 | 親指の付け根の関節に起こる変形性関節症です。 |
| その他の症状・病態 |
|---|
| ・末梢神経障害 ・レイノー現象(指先の血流障害) ・複合性局所疼痛症候群(CRPS) ・手指のむくみ(浮腫) ・筋力低下・握力低下 |
エストロゲン減少の影響
メノポハンドの主な原因は、更年期におけるエストロゲン(女性ホルモン)の減少です。
エストロゲンには腱や関節を保護する働きがあるため、その減少により炎症が起きやすくなります。
生理学的なメカニズム
1. エストロゲンの抗炎症作用の喪失
| 炎症性サイトカインの増加 | エストロゲンは通常、IL-1(インターロイキン1)、IL-6、TNF-α(腫瘍壊死因子α)などの炎症性サイトカインの産生を抑制しています。 エストロゲンが減少すると、これらの炎症物質が増加し、関節滑膜や腱鞘での炎症反応が亢進します。 |
| NF-κB経路の活性化 | エストロゲンはNF-κB(核内転写因子)という、炎症に関わる遺伝子のスイッチ役を抑制しています。 エストロゲンが減少するとNF-κBが活性化し、炎症性遺伝子の転写が促進されます。 |
2. 結合組織への影響
| コラーゲン代謝の変化 | エストロゲンはコラーゲン(腱や靭帯、軟骨を構成する主要なタンパク質)の合成を促進し、分解を抑制しています。 エストロゲン減少により、コラーゲン分解酵素(MMP:マトリックスメタロプロテアーゼ)の活性が上昇し、腱、靭帯、関節軟骨のコラーゲン含量が減少して、組織が脆弱化します。 |
| プロテオグリカンの減少 | 関節軟骨のプロテオグリカン(水分保持機能を持つ成分)が減少することで、軟骨の弾性と衝撃吸収能が低下します。 |
3. 血流と浮腫
| 血管拡張作用の低下 | エストロゲンは一酸化窒素(NO)の産生を促進し、血管拡張を促しています。 エストロゲンが減少すると末梢血流が低下し、組織への酸素・栄養供給が減少します。 |
| 血管透過性の亢進 | 炎症性サイトカインにより血管透過性が増加すると、間質への水分・タンパク質の漏出が起こり、手指のむくみ(浮腫)が発生します。 |
4. 神経への影響
| 神経栄養因子の減少 | エストロゲンは神経成長因子(NGF)などの神経栄養因子の発現を調整しています。 これらが減少すると、末梢神経の修復能力が低下します。 |
| ミエリン鞘への影響 | エストロゲンはシュワン細胞(神経を覆う細胞)の機能を支持しています。 エストロゲン減少でミエリン鞘(神経の絶縁体)の維持が低下し、神経伝導に影響が出ます。 |
| 疼痛閾値の変化 | エストロゲンは痛覚調節に関与しているため、その減少により痛覚過敏が生じやすくなります。 |
5. 手根管症候群の特異的機序
| 滑膜の肥厚 | 炎症性サイトカインにより手根管内の滑膜が増殖・肥厚し、正中神経への圧迫が増強されます。 |
| 体液貯留 | これがエストロゲンは体液調節にも関与しており、その減少により組織への水分貯留が起こりやすくなります。 手根管内圧の上昇につながります。 |
6. 酸化ストレスの増加
| 抗酸化作用の低下 | エストロゲンは抗酸化作用を持っています。 その減少により活性酸素種(ROS)が増加し、細胞膜、DNA、タンパク質への酸化的損傷が起こり、組織の老化と炎症が促進されます。 |
7. 免疫系への影響
| T細胞・B細胞の活性変化 | エストロゲンは免疫系の調節に関与しています。 その減少により自己免疫反応が起こりやすくなる可能性があり、関節リウマチなどの自己免疫疾患発症リスクが上昇します。 |
8. 骨代謝との関連
| 骨吸収の亢進 | エストロゲン減少により破骨細胞(骨を壊す細胞)の活性が上昇します。 これは手指の小関節周囲の骨にも影響し、変形性関節症の進行につながります。 |
症状が出るタイミング
これらの機序が複合的に作用することで、以下のような症状が現れます。
- 朝のこわばり: 夜間の不動により滑膜の炎症と浮腫が起こる
- 痛み: 炎症物質の増加と痛覚過敏
- しびれ: 神経圧迫と末梢神経障害
- 腫れ: 炎症と体液貯留
- 握力低下: 筋力低下と痛みによる動作回避
セルフケア
日常生活でできる対処法をご紹介します。
- 手指のストレッチとマッサージ
朝起きたときや日中こまめに、手指を優しくストレッチしましょう。指を一本ずつゆっくり曲げ伸ばしたり、手首を回したりする動作が効果的です。 - 温める
お風呂にゆっくり浸かったり、温タオルで手を温めたりすることで、血流が改善し、こわばりが和らぎます。 - 適度な運動
全身の血流を良くするために、ウォーキングなどの適度な運動を心がけましょう。 - 手を使いすぎない
家事やパソコン作業など、手を酷使する作業の後は休息を取り、無理をしないようにしましょう。 - サポーターの活用
症状が強い場合は、手首や指のサポーターを使用することで症状を軽減できることがあります。
医療機関での治療
セルフケアで改善しない場合や、日常生活に支障をきたす場合は、医療機関を受診しましょう。
受診する診療科
- 整形外科: 手の専門医がいる場合は、より専門的な診療が受けられます
- 婦人科: ホルモン補充療法を検討する場合
- 神経内科: しびれが強い場合
- その他:整骨院や整体院では保険適用外の施術となります。少なくとも女性ホルモンの働きについて詳しく知識を持つ院をお勧めします。
治療法
| 方法 | 説明 |
|---|---|
| 保存的治療 | ・消炎鎮痛薬の内服 ・湿布や塗り薬 ・理学療法(リハビリテーション) ・装具療法 ・ステロイド注射 ・整体 ・栄養療法 |
| ホルモン補充療法(HRT) | 婦人科で相談のうえ、エストロゲンを補充する治療を検討できます。メノポハンドだけでなく、他の更年期症状も改善する可能性があります。 |
| 手術療法 | 保存的治療で効果がない場合や、症状が重度の場合は、手術が必要になることもあります。 |
こんなときは早めに受診を
以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
- 日常生活に支障をきたすほどの痛みやしびれがある
- 症状が徐々に悪化している
- 手指の変形が目立ってきた
- 夜間に痛みやしびれで目が覚める
- 物を落としやすくなった
- ボタンがかけにくい、箸が持ちにくいなど、細かい動作が困難
メノポハンドは自然に治りますか?
軽度の症状であれば、適切なセルフケアで改善することもあります。しかし、放置すると悪化する可能性もあるため、症状が続く場合は医療機関を受診することをおすすめします。
予防する方法はありますか?
エストロゲンの減少を完全に防ぐことはできませんが、日頃から手指のストレッチを行う、適度な運動をする、バランスの取れた食事を心がけるなど、健康的な生活習慣がリスクを減らす可能性があります。
何歳くらいから注意が必要ですか?
更年期は一般的に45〜55歳頃ですが、個人差があります。40代に入ったら、手の不調に注意を払い、早めの対処を心がけましょう。
両手に症状が出ますか?
多くの場合、両手に症状が出ますが、利き手の方が症状が強く出ることもあります。
更年期が終わったら症状も治まりますか?
更年期後期になり、ホルモンバランスが安定してくると症状が軽減することもあります。ただし、変形性関節症など一度進行した変化は元に戻らないこともあるため、早めの対処が重要です。

メノポハンドは、更年期を迎える多くの女性が経験する手の不調です。
エストロゲンの減少により、炎症が起きやすくなったり、組織が弱くなったりすることが原因です。
軽度の症状であれば、ストレッチや温熱療法などのセルフケアで改善できることもありますが、日常生活に支障をきたす場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
整形外科や婦人科で適切な治療を受けることで、症状の改善や進行の予防が期待できます。
「年齢のせいだから仕方ない」と諦めず、適切な対処をすることで、快適な日常生活を取り戻すことができます。
手の不調を感じたら、まずは専門医に相談してみてください。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。更年期症状が重い場合や、健康上の不安がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。
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