【軟骨の弾力】ひざの衝撃吸収も、「クッション設計士」アグリカン次第
水を抱え込む”膨潤圧”が関節を守る仕組み
前回・前々回の記事では、コラーゲン線維という「建物」を組み上げる建築士(デコリン・ビグリカン)と、その建物を精巧に仕上げるデザイナー(フィブロモジュリン・ルミカン)についてお話ししました。
でも、どれだけ精巧な建物が建っても、衝撃を吸収するクッション材がなければ、体重がかかるたびに建物自体が傷んでしまいます。
今日はその「クッション」を設計している立役者、アグリカンについてです。
目 次

- 体内最大級のプロテオグリカンのひとつ
- コンドロイチン硫酸鎖・ケラタン硫酸鎖という糖鎖(GAG鎖)を100本以上まとった巨大分子
- 無数のアグリカンがヒアルロン酸に次々と結合し、さらに巨大な”凝集体”を形成する
- GAG鎖はマイナス電荷を帯びていて、水分子を強力に引き寄せる性質を持つ
建築士やデザイナーが作った”コラーゲンの網目構造”の隙間に、このアグリカンがぎっしり詰め込まれています。
クッションの仕組み
「膨潤圧」という発想
高吸水性ポリマーやスポンジをイメージしてください。
水を抱え込もうとする力(膨潤圧)が、周りのコラーゲン線維が引き止めようとする張力とちょうど釣り合うことで、体重がかかっても軟骨は潰れきらず、かかった力を面全体に分散して受け止められます。
| 分子 | 役割の例え | 主な仕事 |
|---|---|---|
| デコリン・ビグリカン | 建築士 | コラーゲン線維の太さ・配列を規定する |
| フィブロモジュリン・ルミカン | デザイナー | 線維の密度・透明性を微調整する |
| アグリカン | クッション設計士 | 水分を抱え込み、衝撃を吸収・分散する |
クッションが壊れるとき(概要)

このクッションにも、壊れるきっかけがあります。
ごく簡単に言うと、
- 炎症性サイトカイン(IL-1β・TNF-α)が増える
- それを合図にADAMTS-4/5という分解酵素(通称アグリカナーゼ)が働き出す
- アグリカンが切断され、GAG鎖ごと基質から流れ出てしまう
- 水分を抱え込む力が弱まり、クッション機能が低下する
- 支えを失ったコラーゲン線維にも負担がかかり、傷みやすくなる(MMP-13の関与)
という悪循環が起こります。
この分解のスイッチがどう入るのか、悪循環がどう強化されていくのかは、次回の詳細記事「【変形性膝関節症】静かに進む軟骨破壊、犯人は「解体業者」ADAMTS-4/5」で扱います。
前々回の主役だったビグリカンには、実はもうひとつの顔があります。
普段は基質の中で構造を支える”建築士”として働いていますが、分解されて外に飛び出すと、免疫細胞から「危険信号」として認識され、炎症をさらに後押しすることがあるのです。
つまり軟骨が傷むと、壊れた部品自体が次の炎症の火種になる
という、少し立体的な悪循環も存在しています。
「【コラーゲン線維】関節もお肌のハリも、「建築士」デコリンとビグリカン次第」
このクッション機能がじわじわ低下していくと、歩行や階段昇降のたびに膝にかかる負担が少しずつ蓄積し、変形性膝関節症のリスクにつながっていきます。
痛みが出るころには、すでにこのプロセスがかなり進んでいることも少なくありません。

軟骨自体は自己修復力が乏しい組織です。だからこそ、
- 施術による関節周囲の循環・可動性の改善
- 体重管理や関節に優しい運動習慣
- 抗炎症を意識した食事・栄養
という両輪で、悪循環に入る前の”予防”を意識することが大切です。
関連記事はこちら
今回の記事を読む前の基礎知識として先にお読みして頂くことをお勧めします。
【コラーゲン線維】関節もお肌のハリも、「建築士」デコリンとビグリカン次第 👈
【コラーゲン線維】関節のしなやかさも、お肌の透明感も、「デザイナー」フィブロモジュリンとルミカン次第 👈
次回予告
分解酵素ADAMTS-4/5の正体と、悪循環がどのように強化されていくのかを、詳細記事で掘り下げます。
「【変形性膝関節症】静かに進む軟骨破壊、犯人は「解体業者」ADAMTS-4/5」
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