【変形性膝関節症】静かに進む軟骨破壊、犯人は「解体業者」ADAMTS-4/5

炎症が呼び起こす、軟骨破壊の悪循環

前回の記事で、軟骨のクッション役アグリカンが「炎症をきっかけに壊れていく」という悪循環に軽く触れました。

今回はその”解体作業”の主犯であるADAMTS-4/5にスポットを当て、変形性膝関節症(OA)へとつながる悪循環をもう一段深く見ていきます。

目 次

ADAMTSファミリーとは

医師の説明

ADAMTS(A Disintegrin And Metalloproteinase with ThromboSpondin motifs)は、体内のさまざまな組織で基質分解に関わる酵素ファミリーです。

その中でもADAMTS-4・ADAMTS-5は、軟骨のアグリカンを狙い撃ちにして分解することから、アグリカナーゼとも呼ばれています。

普段は不活性な前駆体(潜在型)として存在していますが、あるきっかけで”解体業者”として稼働を始めます。

解体のスイッチが入る瞬間

関節に炎症が起こる
IL-1β・TNF-αといった炎症性サイトカインが増加

軟骨細胞
(軟骨細胞・滑膜細胞)
の受容体に結合
細胞内シグナル伝達(NF-κB経路など)を活性化

ADAMTS-4/5の発現増
さらにタンパク質分解によって”潜在型”から”活性型”へと変換される

活性化したADAMTS-4/5が、
アグリカンの中でも特に重要な部位(インターグロブラー領域)を切断する

つまりADAMTS-4/5は、いきなり暴れ出す酵素ではなく、炎症シグナルという”指令”を受けて初めて解体作業を始める、という点がポイントです。

悪循環のループ:解体は解体を呼ぶ

ここからが本題です。

この解体作業は、一度きりで終わりません。


サイトカイン(IL-1β・TNF-α)がADAMTS-4/5を活性化


アグリカンが切断され、GAG鎖ごと軟骨基質から流出


保水力(膨潤圧)が低下し、クッション機能が破綻


支えを失ったコラーゲン線維に機械的な負荷が集中


コラーゲン分解酵素MMP-13が活性化し、II型コラーゲンそのものが壊され始める


壊れた軟骨基質の断片や、遊離したビグリカンなどが放出される


これらがDAMP(危険関連分子パターン)として自然免疫受容体(TLR2・TLR4など)
を刺激


免疫細胞がさらに炎症性サイトカインを産生


①に戻る

一度回り始めると、”壊れた部品自体が次の炎症の引き金になる”という、自己強化型のループになってしまうのが厄介な点です。

ビグリカンの二面性、もう一歩踏み込んで

前回軽く触れたビグリカンの二面性を、この悪循環の中に位置づけてみます。

二面性

基質の中にいるとき
コラーゲン線維の直径を調整する
“建築士”
として、構造の安定に貢献

分解されて遊離したとき
TLR2/TLR4を介して自然免疫を刺激する
“警報装置”
として働き、サイトカイン産生を後押し

同じ分子が、置かれている場所によってまったく違う顔を見せる。
この二面性が、悪循環をより立体的で自己増幅的なものにしています。

📄 このメカニズムは股関節にも共通する?

ここまでは膝を例にお話ししましたが、ADAMTS-4/5によるアグリカン分解から悪循環へと発展するこのメカニズムそのものは、膝に限らず股関節を含む滑膜関節に共通する仕組みです。分子レベルの話は、股関節にもそのまま当てはまります。

ただし臨床像としては多少の違いがあります。

股関節症(変形性股関節症)は、日本人では臼蓋形成不全などの先天的・発達的要因による二次性OAの割合が高い、という疫学的な特徴があります(欧米では膝と同様に一次性が多い)
荷重のかかり方や可動域が膝と異なるため、進行パターンや症状の出方(鼠径部痛など)は異なります。

変形性膝関節症(OA)の臨床像とのつながり

医師に相談、医師からの説明

このループが慢性的に続くことで、

  • 軟骨の菲薄化・摩耗
  • 関節裂隙の狭小化(レントゲンで確認される所見)
  • 骨棘(こつきょく)形成
  • 関節液の性状変化、滑膜の炎症

といった、変形性膝関節症でよく見られる所見につながっていきます。

痛みが自覚される頃には、このループがすでに長期間回り続けていることも珍しくありません。

ループをどう断つか:施術とセルフケアの両輪

両輪

軟骨そのものの再生力には限界があるため、”ループに火をつけない・大きくしない”という視点が重要になります。

  1. 施術による関節周囲の循環改善・過剰な機械的ストレスの緩和
  2. 体重管理や関節に負担をかけにくい運動習慣や歩き方の改善で①のきっかけを減らす
  3. 抗炎症を意識した栄養で、サイトカイン産生の土台を整える

この両輪を意識することが、悪循環に早い段階でブレーキをかける鍵になります。


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