日光浴で血圧が下がる? ―皮膚が貯めている”血管をゆるめる物質”
猛暑で外に出ない夏と、冷えとだるさの冬。
血流と自律神経から見た「日光不足」
「なんとなく不調」の裏に、血流の問題が隠れているかもしれません
- 冬になると肩こりや冷えがひどくなる
- 猛暑のあいだ外出を控えていたら、なんだか体が重い
- 病院で検査をしても「異常なし」と言われるのに、すっきりしない
Part 1では、日光を浴びた皮膚の中でつくられるビタミンDの光分解生成物が、安全弁として働きながら皮膚を守っているお話をしました。
※Part 1の記事をまだお読みでない方は、先にこちらをご覧いただくと、今回の内容がより理解しやすくなります。
Part 2(今回)では、もうひとつ見逃されがちな日光のはたらき、「血流・血圧」と日光の関係を取り上げます。
主役は、ビタミンDではありません。
一酸化窒素(NO)という小さな分子です。
目 次

一酸化窒素(NO)は、血管の壁をゆるめて広げる作用をもつ分子です。
多くの方は、NOは「血管の内側の細胞(血管内皮)が、酵素(NO合成酵素:NOS)を使ってその場でつくるもの」とイメージされるかもしれません。もちろんそれも大切な経路です。
ところが近年、皮膚そのものに、NOのもとになる物質(亜硝酸塩やS-ニトロソチオールなど)が大量にたまっていることがわかってきました。血液中を流れている量よりも、皮膚や真皮の血管にためこまれている量のほうがはるかに多い、と報告されています。
そしてこの貯蔵NOは、UVA(長波長の紫外線)が当たると光で分解され、遊離のNOとして放出されるのです。酵素による「合成」ではなく、光による「放出」。
ここが重要なポイントです。
人での実験:UVAを浴びると血圧が下がった

2014年、エディンバラ大学とサウサンプトン大学の研究チームが、医学誌 Journal of Investigative Dermatology に重要な研究を報告しました(Liu ら)。
研究のポイント
・対象は健康なボランティア24人
・皮膚にUVAを照射(標準紅斑量の2倍量)
・室温や皮膚温の影響を統制した条件でも、血圧が低下
・血液中では硝酸塩が減り、亜硝酸塩が増えるという、皮膚からNOが動員されたことを示す変化が確認された
・前腕に照射すると血流が増加。しかも、NO合成酵素(NOS)の働きを抑えても血流は増えた
・皮膚の観察では、UVAによるNOの放出は用量に依存し、光に反応するNOの大部分は表皮の上層にあった
つまりこの研究は、「日光が血圧を下げる経路は、酵素でつくるNOではなく皮膚にためておいたNOを光で放つ経路でも起こりうる」ことを人で示したものです。
しかも、使われたUVAはビタミンDをほとんどつくらない波長です。ビタミンDとは別の、日光の恩恵があるということになります。
一酸化窒素(NO)はどうやって血管をゆるめるの?
血管の壁には平滑筋があり、これが縮むと血管は細くなり、ゆるむと広がります。
NOは平滑筋の細胞内で「可溶性グアニル酸シクラーゼ」という酵素を活性化し、cGMPという情報伝達物質を増やします。
その結果、筋肉がゆるんで血管が広がり、血圧が下がります。
なお、食べ物由来の硝酸塩(野菜など)→亜硝酸塩→NOと変換される経路も知られており、皮膚にたまっている亜硝酸塩はこの流れの一部と考えられています。
冬に血圧が上がるのは、寒さだけが原因ではないかも

血圧には季節変動があり、収縮期・拡張期とも冬に高く、夏に低くなる傾向が知られています。
これは一般には気温の違いで説明されてきました。
この研究を報告した研究者たちは、日照量の変化もその一因かもしれないという見方を示しています。
もちろん「気温は関係ない」という意味ではありません。
寒冷刺激で血管が収縮する影響は大きく、日照だけで説明できるわけではありません。
ただ、気温と日照が同時に変わる季節の中で、後者の寄与が見過ごされてきた可能性がある、というのがポイントです。

疫学のデータも一つ紹介します。
スウェーデンの女性約3万人を20年ほど追跡した調査(Lindqvist ら、2014年)では、日光を避ける習慣のある人は、日光をよく浴びる人に比べて全死亡リスクが約2倍でした。
その差の主な原因は、がんではなく心血管疾患やその他の非がん死亡の増加でした。
ただし、ここは冷静に読む必要があります。
観察研究であり、「日光を避ける」ことが原因と断定はできません(持病や体力の低下で外出できない、などの影響が混ざる可能性)
実際にこの論文に対しては、交絡因子の扱いなどについて他の研究者からの指摘もあります。
論文自身も、メカニズムの候補として「ビタミンD不足」と「UVAによる皮膚由来NOの血圧低下作用」を可能性として挙げているにとどまります。
「日光が命を延ばす」と言い切れる段階ではありません。ですが、日光をゼロに近づける生活が、健康にとって中立ではないかもしれない。この視点は持っておく価値があります。

ここまでは血管の話でした。
では、自律神経はどう関わるのでしょうか。
血圧や末梢の血流は、交感神経と副交感神経のバランスで細かく調整されています。
血管が緊張しっぱなしになれば、肩・首のこわばりや冷え、頭の重さにつながります。
ここは整体の現場でもよく見る組み合わせです。
日光と自律神経の関係には、おもに2つの経路が考えられます。
- 皮膚から血管へ(今回のNOの経路):血管の緊張がゆるむことで、血圧や血流の調整を助ける
- 目から脳へ(Part 3で詳しく扱います):光が目の網膜に入り、体内時計の中枢(視交叉上核)を通じて自律神経のリズムを整える
正直にお伝えすると、「日光を浴びると自律神経のバランスが整う」と人で直接示した研究は、まだ結果がそろっていません。
たとえば、光への曝露が心拍変動(自律神経の指標のひとつ)に与える影響は、明るい光で一時的に低下したり、数日続けると上がったりと、条件によって報告がばらついています。
ですので、現時点では「日光→NO→血管のゆるみ→血圧・血流の調整」という血管側の話は研究の裏づけがあり、「自律神経全体にどう効くか」は有力な仮説で、さらなる研究が必要、という整理が誠実だと考えています。

この話題は誤解されやすいので、はっきり書いておきます。
- 日焼けサロンや日焼けを勧める話ではありません。 実験で使われたのは、研究室で厳密に管理された線量です。紅斑(赤くなる)量の照射であり、日常で真似するものではありません。
- 効果は「穏やか」で「一時的」です。 血圧が下がったのは数mmHg程度で、照射中〜その後の限られた時間でした。長期的に高血圧を予防・改善するかどうかは、この実験だけでは言えません。
- 降圧薬の代わりにはなりません。 高血圧で治療中の方は、自己判断で変えず主治医にご相談ください。
- 日焼け止めや紫外線対策そのものを否定するものではありません。 問題になるのは、対策によって日照時間そのものが極端にゼロへ近づく生活です。強い日差しの時間帯は避ける、長時間は帽子や日傘を使う、といった工夫と両立できます。

研究で「何分浴びればよい」と確立された目安はありません。
そのため具体的な分数は断言せず、考え方だけお伝えします。
- 猛暑日は、朝や夕方の涼しい時間帯に短い散歩を
- 通勤・買い物で少し遠回りして歩く、一駅分歩く
- 昼休みにビルの外へ出て日なたで数分過ごす
- 日焼けが気になる方は、赤くなる前にやめることを基本に
大切なのは「焼くこと」ではなく、「日光ゼロの生活にしないこと」です。
まとめ

- 皮膚には一酸化窒素(NO)の貯蔵があり、UVAが当たると放出される
- 人の実験で、UVA照射により血流が増え、血圧が穏やかに下がった。ビタミンDをつくらない波長でも起きた
- 冬に血圧が高くなる背景に、日照の減少も関わっている可能性がある
- 「日光と自律神経」は有力な仮説段階。目→脳の経路は次回(Part 3)で扱う
- 日焼けのすすめではなく、「極端な日光ゼロ」を避けるという視点が大切
整体と日光浴は、健康の「両輪」
日光が血管のゆるみを助けてくれる一方で、首・肩・背中の筋緊張や、自律神経の乱れで血管がずっと緊張している状態では、せっかくの血流も届きにくくなります。
誠巧整骨院の脳活セロトニン調律整体では、筋肉のこわばりだけでなく、自律神経のバランスにも目を向けた施術を行っています。
- 当院での施術で、体の緊張と自律神経の土台を整える
- ご自宅では、無理のない範囲の日光と散歩で、血流のリズムをつくる
この「両輪」で、原因のはっきりしない不調に向き合っていきましょう。
「検査では異常なしと言われたけれど、つらい」という方は、お気軽にご相談ください。
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日光浴のような日々のセルフケアは、体を整えるための大切な”片輪”です。
もう一方の”片輪”として、乱れた自律神経を直接整える施術(脳活セロトニン調律整体)で、内側からのコンディション調整もサポートしています。
夏からの生活習慣で自律神経の乱れを感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
当院では、身体の不調を脳活セロトニン調律整体に加えて体の歪み矯正や栄養指導、運動指導、生活習慣や環境の改善も含めたサポートを大切にしています。
原因不明扱いされているかもしれない不調でお悩みの方も、ぜひご相談ください。
体質改善には時間がかかりますが、一緒に取り組んでいきましょう。
ご相談はお気軽に!
参考文献
- Liu D, Fernandez BO, Hamilton A, Lang NN, Gallagher JMC, Newby DE, Feelisch M, Weller RB. UVA irradiation of human skin vasodilates arterial vasculature and lowers blood pressure independently of nitric oxide synthase. J Invest Dermatol. 2014;134(7):1839-1846.
- Opländer C, et al. Whole body UVA irradiation lowers systemic blood pressure by release of nitric oxide from intracutaneous photolabile nitric oxide derivates. Circ Res. 2009;105(10):1031-1040.
- Lindqvist PG, Epstein E, Landin-Olsson M, Ingvar C, Nielsen K, Stenbeck M, Olsson H. Avoidance of sun exposure is a risk factor for all-cause mortality: results from the Melanoma in Southern Sweden cohort. J Intern Med. 2014;276(1):77-86.
- Lindqvist PG, et al. Avoidance of sun exposure as a risk factor for major causes of death: a competing risk analysis of the Melanoma in Southern Sweden cohort. J Intern Med. 2016.
- 光曝露と心拍変動に関するシステマティックレビュー:Effects of light exposure on vagally-mediated heart rate variability. Neurosci Biobehav Rev. 2025.
※ 本記事は一般的な健康情報であり、診断・治療に代わるものではありません。高血圧などで通院中の方は、主治医の指示に従ってください。











