ノーベル賞受賞!Treg細胞とアトピーの深い関係
日本人研究者の快挙
2025年、大阪大学の坂口志文先生がノーベル生理学・医学賞を受賞されました。その受賞理由は「制御性T細胞(Treg細胞)の発見」です。
この発見は、アトピー性皮膚炎で悩む私たちにとって、とても大きな意味を持っています。
今回は、前回お話しした「ヒスタミン」との繋がりも含めて、Treg細胞とアトピーの関係について、わかりやすくお伝えします。
目 次
私たちの体には、外敵から身を守る「免疫システム」があります。しかし、この免疫が暴走してしまうと、自分の体を攻撃してしまいます。
それがアレルギー疾患や自己免疫疾患です。
Treg細胞(制御性T細胞)は、この暴走を止める「ブレーキ役」なのです。
🔸車に例えるなら
🔹アクセル=攻撃的な免疫細胞(エフェクターT細胞)
🔹ブレーキ=Treg細胞
健康な人は、このアクセルとブレーキのバランスが取れています。しかし、アトピー性皮膚炎の方は、このブレーキが効きにくい状態になっているのです。
多くの研究で、アトピー性皮膚炎の患者さんは、Treg細胞の数が少ない、または機能が低下していることがわかっています。
Treg細胞が不足すると何が起こる?
- 免疫の過剰反応
ブレーキが効かないため、免疫細胞が過剰に反応
ちょっとした刺激(ハウスダスト、汗、摩擦など)にも敏感に - 炎症の慢性化
炎症を抑える力が弱いため、炎症が長引く
皮膚のバリア機能がさらに低下 - かゆみの悪循環
ここが前回のヒスタミンの話と繋がります!
前回のブログで、ヒスタミンが「かゆみ物質」として働くことをお話ししました。
実は、Treg細胞とヒスタミンは深く関係しているのです。
悪循環のメカニズム
↓
免疫の過剰反応が止まらない
↓
炎症が悪化・長期化
↓
肥満細胞からヒスタミンが大量放出
↓
強いかゆみ
↓
掻き壊し
↓
皮膚バリアの破壊
↓
さらに炎症が悪化(最初に戻る)
つまり、Treg細胞がしっかり働かないと、ヒスタミンによるかゆみも抑えられないという関係があるのです。
坂口先生のTreg細胞の発見は、新しい治療法の開発に繋がっています。
すでに実用化されている治療
- デュピクセント(デュピルマブ)
過剰な免疫反応を抑える注射薬
Treg細胞の研究から生まれた治療の一つ - JAK阻害薬
炎症のシグナルを抑える飲み薬・塗り薬
免疫バランスを整える
今後期待される治療
- Treg細胞を増やす治療の研究が進んでいます
- 体の中の「ブレーキ」を強化する、根本的な治療の可能性
Treg細胞を元気にする生活習慣
新しい治療法を待つだけでなく、日常生活でもTreg細胞の働きをサポートできます。
1. 腸内環境を整える
Treg細胞の多くは腸で作られます。
- 発酵食品を取り入れる(ヨーグルト、納豆、味噌など)
- 食物繊維を意識して摂る(野菜、海藻、きのこ)
- 善玉菌のエサになるオリゴ糖も効果的
2. ビタミンDを確保する
ビタミンDはTreg細胞の働きを助けます。
- 適度な日光浴(1日15〜30分程度)
- ビタミンD豊富な食材(鮭、きのこ類)
- 必要に応じてサプリメント(医師に相談)
3. 自律神経を整える(とても重要!)
実は、Treg細胞と自律神経には深い関係があります。これは近年の研究で明らかになってきた重要なポイントです。
🔸自律神経とTreg細胞の関係
🔹自律神経には2つの種類があります
- 交感神経:活動・緊張・ストレス時に働く「アクセル」
- 副交感神経:リラックス・休息時に働く「ブレーキ」
🔹研究によると
- 副交感神経が優位(リラックス状態) → Treg細胞の機能が向上
- 交感神経が優位(ストレス状態) → Treg細胞の機能が低下
つまり、慢性的なストレスや自律神経の乱れは、Treg細胞のブレーキ機能を弱めてしまうのです。
🔸ストレスが引き起こす悪循環
↓
自律神経の乱れ(交感神経優位)
↓
Treg細胞の機能低下
↓
免疫の過剰反応
↓
炎症悪化・ヒスタミン放出
↓
強いかゆみ・不眠
↓
さらにストレス増加(最初に戻る)
この悪循環を断ち切るには、自律神経を整えることが非常に重要です。
🔸自律神経を整える方法
- 十分な睡眠(7〜8時間)
- 深呼吸やリラックスできる時間を作る
- 適度な運動
- 専門的なアプローチ:当院の「脳活セロトニン調律整体」
4. ストレスケア
慢性的なストレスは、Treg細胞の機能を低下させます。
- 十分な睡眠(7〜8時間)
- リラックスできる時間を作る
- 深呼吸や軽い運動
- 専門的なアプローチ:当院の「脳活セロトニン調律整体」
6. 皮膚バリアの保護
前回のヒスタミンの話でもお伝えしましたが:
- こまめな保湿で皮膚バリアを守る
- 刺激を減らす(低刺激の石鹸、優しく洗う)
- 掻き壊さないための工夫(爪を短く、かゆみ止めの使用)
7. 適切な医療との併用
- 処方された薬はしっかり使う
- ステロイド外用薬も、適切に使えば安全で効果的
- 定期的な受診で状態をチェック
希望を持って向き合う
坂口先生のノーベル賞受賞は、アトピー性皮膚炎の研究が着実に進んでいる証です。
Treg細胞の発見により、アトピー性皮膚炎は「免疫のブレーキが効きにくい病気」だとわかりました。
この理解が、新しい治療法の開発に繋がっています。
そして、Treg細胞の機能低下が、前回お話しした「ヒスタミンの過剰放出→強いかゆみ」という悪循環を引き起こす根本原因の一つであることも明らかになっています。
🔸私たちにできることは
- 新しい治療法について医師と相談すること
- 日々の生活習慣でTreg細胞をサポートすること
- 適切なスキンケアで悪循環を断ち切ること
アトピー性皮膚炎の治療は、日々進歩しています。希望を持って、一緒に向き合っていきましょう。
※この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や治療については、必ず主治医にご相談ください。
関連記事のご案内
更年期と「めまい・内耳のむくみ」の関係 〜女性ホルモンとヒスタミンの意外なつながり〜👈
あなたやご家族の健康を守るために
大阪市西成区で姿勢や体をしっかり働けるようにしたい方へ
当院では、身体の不調を脳活セロトニン調律整体、体の歪み矯正や栄養指導、運動指導に加えて生活習慣や環境の改善も含めたサポートを大切にしています。
ご相談はお気軽に!