更年期女性のためのエクオール完全ガイド:腸活と女性ホルモン基礎知識編
あなたは作れる人?作れない人?
エクオール産生菌のチームプレイを理解する
更年期に入ると、ホットフラッシュ、イライラ、骨密度の低下など、さまざまな不調に悩まされる女性は少なくありません。これらの症状の多くは、女性ホルモン(エストロゲン)の減少が原因です。
そんな中、注目を集めているのが「エクオール」という成分です。
大豆イソフラボンから腸内細菌によって作られるこの物質は、エストロゲンに似た働きをし、更年期症状を和らげる可能性があると言われています。
しかし、実は日本人の約半数はエクオールを体内で作ることができません。
本記事では、エクオールの基礎知識から、産生できる人・できない人の違い、そしてエクオール産生のメカニズムまで、徹底解説します。
目 次
エクオールの正体

エクオールは、大豆製品に含まれる大豆イソフラボン(ダイゼイン)が、腸内細菌によって代謝されて生まれる成分です。
🔸エクオール生成のメカニズム
↓
大豆イソフラボン(ダイゼイン)摂取
↓
腸内のエクオール産生菌が代謝
↓
エクオール生成
↓
血液中に吸収され全身へ
なぜエクオールが重要なのか
エクオールには、イソフラボンをそのまま摂取するよりも優れた点があります。
エクオールの主な作用
エストロゲン様作用
・女性ホルモンに似た構造を持ち、エストロゲン受容体に結合
・更年期のホルモン減少を穏やかに補う- 強力な抗酸化作用
・大豆イソフラボンの約2倍の抗酸化力
・活性酸素を除去し、老化を防ぐ - 抗アンドロゲン作用
・男性ホルモンの過剰な作用を抑制
・薄毛や体毛増加の予防
エクオールで期待できる効果
研究により、以下のような効果が報告されています。
🔸更年期症状の改善
・ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)の軽減
・首や肩のこりの改善
・イライラ感の緩和
・睡眠の質の向上
🔸骨の健康維持
・骨密度の低下を抑制
・骨粗鬆症リスクの軽減
🔸美容効果
・シワの改善
・肌の弾力性向上
・肌の水分量増加
🔸メタボリックシンドローム対策
・内臓脂肪の蓄積抑制
・LDLコレステロール値の改善
・動脈硬化の予防
日本人の産生能力
驚くべきことに、エクオールを体内で作れるかどうかは個人差があります。
🔸日本人のエクオール産生率
・産生者:約50%
・非産生者:約50%
ちなみに、欧米人では産生者は約20〜30%程度。
日本人の産生率が高いのは、伝統的な大豆食文化のおかげと考えられています。
世代による違い
興味深いことに、若い世代ほど産生率が低下している傾向があります。
・60代以上:約60%が産生者
・40〜50代:約50%が産生者
・20〜30代:約40%が産生者
この背景には、食生活の欧米化や大豆製品を食べる機会の減少があると言われています。
エクオールを作れない理由
非産生者がエクオールを作れないのは、主に以下の理由です。
- エクオール産生菌の不在
腸内にエクオールを作る腸内細菌(主にSlackia equolifaciensなどの菌)がいない、または少ない状態です。 - 腸内環境の乱れ
以下のような要因で腸内環境が悪化すると、エクオール産生能力が低下します。
・食生活の乱れ(高脂肪・高糖質食)
・食物繊維不足
・慢性的なストレス
・睡眠不足
・抗生物質の頻繁な使用
・運動不足 - 大豆製品の摂取不足
エクオール産生菌も、材料(大豆イソフラボン)がなければエクオールを作れません。
日常的に大豆製品を食べる習慣がないと、産生能力があっても十分なエクオールは生成されません。
自分が産生者かチェックする方法
エクオール産生能力は、簡単な検査で確認できます。
🔸ソイチェック(尿検査キット)
自宅で採尿し、郵送するだけ
・費用:約4,000〜5,000円
・結果:約1〜2週間で判明
・購入:Amazonや薬局、婦人科クリニック
検査結果では、エクオール産生量がレベル1〜5で示され、自分がどの程度エクオールを作れているかが分かります。
🔸検査のタイミング
検査前日〜当日に大豆製品を食べることが推奨されています(納豆1パック、豆腐半丁など)。
これは、材料があるときにきちんとエクオールを作れるかを見るためです。

エクオールを作る腸内細菌について、詳しく見ていきましょう。
主なエクオール産生菌
エクオールの最終的な産生を担う主要な菌は以下の通りです。
| エクオール産生菌 | 補足 |
|---|---|
| Slackia equolifaciens (スラッキア・エクオリファシエンス) | ・最も代表的なエクオール産生菌 ・ヒトの腸内から分離された ・最も研究が進んでいる |
| Adlercreutzia equolifaciens (アドレルクロイツィア・エクオリファシエンス) | ・もう一つの主要なエクオール産生菌 ・日本人の腸内でよく見られる |
| ・Asaccharobacter celatus ・Eggerthella属 ・Lactococcus garvieae | その他のエクオール産生能力を持つ菌 |
🔸重要:エクオール産生は「チームプレイ」
実は、エクオール産生は単一の菌だけではなく、複数の腸内細菌の協力によって行われます。これは非常に重要なポイントです。
🔸エクオール産生の3段階プロセス
【第1段階:準備】
Bifidobacterium(ビフィズス菌)
Lactobacillus(乳酸菌)
↓
腸内環境を整える
pH調整、短鎖脂肪酸産生
【第2段階:中間代謝】
Eggerthella属
Bacteroides属の一部
Clostridium属の一部
↓
ダイゼイン → 中間代謝物(ジヒドロダイゼイン)
【第3段階:最終産生】
Slackia equolifaciens
Adlercreutzia equolifaciens
↓
中間代謝物 → エクオール完成
3つの協力パターン
人によって、異なる菌の組み合わせでエクオールを作っています。
🔸パターンA:単独型
Slackia equolifaciens(単独)
→ ダイゼインからエクオールまで一気に変換
→ 最も効率的だが、この菌を持つ人は限られる
🔸パターンB:協力型(最も一般的)
【準備】腸内の嫌気性菌群
↓
【中間代謝】Bacteroides属、Eggerthella属など
↓
【最終産生】Slackia or Adlercreutzia
↓
エクオール完成
🔸パターンC:サポート型
【環境づくり】
Bifidobacterium、Lactobacillus
(pH6.0-7.0に調整、栄養供給)
↓
【エクオール産生】
Slackia equolifaciens が活発に働く
↓
エクオール
なぜ「チームプレイ」が重要なのか
代謝の複雑性
ダイゼインからエクオールへの変換は、複数の化学反応が必要です。
一つの菌だけでは完結しないことが多いのです。- 腸内環境の重要性
最終的なエクオール産生菌(Slackia属など)が働くには、
・適切なpH(6.0-7.0の弱酸性〜中性)
・十分な栄養(食物繊維、オリゴ糖)
・酸素の少ない嫌気環境
これらを整えるのが、ビフィズス菌や乳酸菌などのサポート役です。 - 個人差がある理由
人によって持っている菌の組み合わせが違います。
・Aさん:Slackia単独で産生可能
・Bさん:複数の菌の協力で産生
・Cさん:主要な産生菌が不在で産生不可
これが「産生者50%、非産生者50%」という違いを生む理由です。

ここまで見てきて分かることは、イソフラボンを摂るだけでは不十分ということです。
エクオール産生には複数の条件が揃う必要があります。
1. 大豆イソフラボン(材料)
・エクオールの原料となるダイゼイン
・これがないと何も始まらない
・目安:1日40〜50mg(納豆1パック程度)
2. エクオール産生菌(職人)
・Slackia equolifaciens などの特定の腸内細菌
・約50%の日本人はこの菌を持っていない
・鍵:腸内環境を整えることで菌を増やせる可能性
3. 腸内細菌のエサ(職人の栄養源)
・食物繊維:野菜、海藻、きのこ、根菜
・オリゴ糖:バナナ、玉ねぎ、ごぼう
・これらがないとエクオール産生菌が活動できない
4. 適切な腸内環境(良い作業環境)
・pH値:弱酸性〜中性(pH 6.0〜7.0)が理想的
・腸内フローラ:善玉菌優位の状態
・腸の動き:適度な蠕動運動
pH(ペーハー)について
腸内のpH値は、エクオール産生に大きく影響します。
🔸理想的なpH:6.0〜7.0(弱酸性〜中性)
・エクオール産生菌が最も活発に働く環境
・善玉菌が優位な状態
🔸アルカリ性に傾くと(pH 7.5以上)
・悪玉菌が増殖しやすい
・エクオール産生菌の活動が著しく低下
・腸内環境が悪化
腸内pHをアルカリ性にしてしまう原因
高脂肪・高タンパク食(肉中心の食事)- 食物繊維不足
- 便秘
- ストレス
- 運動不足
5. 十分な腸内滞留時間(作業時間)
・エクオール産生には一定の時間が必要
・便秘でも下痢でもない健康な状態が理想

たとえ話で説明しましょう。
エクオール産生は、職人が材料を使って製品を作るプロセスに似ています。
- 材料だけあっても職人がいなければ作れない
→ イソフラボンだけ摂っても、産生菌がいなければエクオールは作られない - 職人がいても材料がなければ作れない
→ 産生菌がいても、イソフラボンを摂らなければエクオールは作られない - 職人がお腹を空かせていたら働けない
→ 食物繊維やオリゴ糖がないと、産生菌が活動できない - 作業環境が悪ければ良い仕事ができない
→ 腸内環境が乱れている(pH値が不適切、悪玉菌優位)と、エクオール産生効率が下がる例えば:
・腸内がアルカリ性に傾いている(pH 7.5以上)
・悪玉菌が増えて善玉菌が減っている
・慢性的な便秘で腐敗物質が溜まっている
このような状態では、エクオール産生菌がいても十分に働けません。 - 十分な作業時間がなければ完成しない
→ 腸内滞留時間が短すぎるとエクオールが作られる前に排出される
つまり、大豆製品を食べるだけでなく、野菜・海藻・きのこなどの食物繊維も一緒に摂ることが絶対に必要なのです。
エクオールサプリメントを飲めば、食事は気にしなくても良い?
いいえ、サプリメントだけに頼るのはおすすめできません。
サプリメントは確かにエクオールを直接摂取できますが、食事から得られる栄養素は多岐にわたります。大豆製品には、イソフラボンだけでなく、たんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどが含まれています。
また、腸内環境を整えることは、エクオール産生だけでなく、免疫力向上、メンタルヘルス、美肌など、全身の健康に関わります。
理想的なアプローチ
・基本は食事からの摂取を心がける
・非産生者や食事だけでは不十分な場合にサプリメントを補助的に使用
・医師や栄養士に相談しながら判断
納豆だけたくさん食べればエクオールは作られますか?
いいえ、納豆だけでは不十分です。
これは非常に重要なポイントです。エクオール産生には「材料(イソフラボン)」と「腸内細菌のエサ(食物繊維・オリゴ糖)」の両方が必要です。
NG例
朝:納豆ご飯のみ
昼:肉中心の定食(野菜少なめ)
夜:豆腐だけ
→ イソフラボンはあるが、食物繊維不足で産生菌が働けない
OK例
朝:納豆ご飯 + わかめ味噌汁 + 野菜の小鉢
昼:豆腐サラダ(野菜たっぷり)+ きのこスープ
夜:鮭の味噌焼き + 野菜炒め + 玄米ご飯
→ イソフラボン + 食物繊維で産生菌が活発に
🔸覚えておきたいポイント
・大豆製品と野菜・海藻・きのこは必ずセットで
・「材料」と「菌のエサ」の両方を毎日摂取
・バランスの取れた食事が何より大切
非産生者は一生エクオールを作れないの?
いいえ、腸内環境を改善すれば産生者になれる可能性があります。
研究によると、3ヶ月間継続的に大豆製品を摂取し、腸内環境を整えることで、非産生者の一部が産生者に変わったという報告があります。
🔸改善のステップ
- 毎日大豆製品を摂取(最低3ヶ月継続)
- 食物繊維をたっぷり摂る(これが最重要!)
- 発酵食品を積極的に取り入れる
- 生活習慣を整える(睡眠・運動・ストレス管理)
- 3〜6ヶ月後に再検査
🔸重要ポイント
- 大豆製品だけでなく、野菜・海藻・きのこも毎日必ず摂る
- 総合的な腸活が産生能力獲得の鍵
- 諦めずに続けることが大切
更年期症状が軽い人もエクオールは必要?
予防の観点から、症状の有無に関わらず取り入れる価値があります。
エクオールは更年期症状の緩和だけでなく、以下の予防効果も期待できます。
🔸予防効果
- 骨粗鬆症の予防(骨密度の維持)
- 心血管疾患の予防
- 認知症の予防
- 肌の老化予防
- メタボリックシンドロームの予防
症状が出る前から、健康的な食生活を続けることが、将来の健康につながります。

🔸エクオールの3つのポイント
- エクオールとは
・大豆イソフラボンから腸内細菌が作る成分
・エストロゲンに似た作用で更年期症状を緩和
・抗酸化作用、骨の健康維持、美容効果も - 産生できる人・できない人
・日本人の約50%は産生者、50%は非産生者
・エクオール産生菌の有無が鍵
・検査(ソイチェック)で確認可能 - エクオール産生のメカニズム
・複数の腸内細菌のチームプレイ
・材料(イソフラボン)+ 菌のエサ(食物繊維)+ 適切な腸内環境
・すべてが揃って初めて産生される
🔸次のステップ
エクオールの基礎知識を理解したら、次は実践です。
次回記事では
・エクオール産生能力を高める具体的な5つの方法
・腸内pHを理想的に保つ食事法
・発酵食品の賢い取り入れ方
・生活習慣の改善ポイント
を詳しく解説します。
第1回:腸活と女性ホルモン基礎知識編(この記事)
第2回:腸活実践編(次回)
第3回:レシピ&メニュー編
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。更年期症状が重い場合や、健康上の不安がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
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