朝の光が「心のスイッチ」を入れる?【朝の日光浴】

目から入る光が、気分とリズムを整える理由

日光浴シリーズ Part3

日が短くなり、朝晩の空気がひんやりしてくる季節。

  • 「朝、なかなかスッキリ起きられない」
  • 「なんとなく気分が上がらない」
  • 「夜、寝つきが悪い」

こんな感覚に心当たりはありませんか?

Part1では、皮膚が日光(UVB)を受けて作り出す「光分解生成物」という隠れた守護物質を、Part2では、日光(UVA)が血管をゆるめ、血圧や自律神経に働きかける研究をご紹介しました。

最終回となるPart3の主役は、目から入る光です。

光は皮膚だけでなく、目を通して脳に届き、「セロトニン」と「体内時計」を介して、私たちの気分や自律神経のリズムにまで関わっています。

※Part 1・Part 2の記事をまだお読みでない方は、先にこちらをご覧いただくと、今回の内容がより理解しやすくなります。

Part 1→「原因不明な不調は、日光浴不足が原因?―日光が肌に贈る”隠れた守護物質”の正体」

Part 2→「日光浴で血圧が下がる? ―皮膚が貯めている”血管をゆるめる物質”」

目 次

日光を浴びる量で、脳のセロトニンは変わる?

医師に相談、医師からの説明

2002年、オーストラリア・ベイカー研究所のガヴィン・ラムバート博士らが、医学誌『The Lancet』に興味深い研究を報告しました。

通常、脳内のセロトニン動態は髄液で調べられますが、季節性うつ(季節性感情障害)の方でも髄液中の濃度は正常でした。

そこで研究チームは、より正確な方法として、脳から流れ出る血液(内頸静脈)を採取し、脳内のセロトニンの「ターンオーバー(産生と代謝の回転)」を測定しました。

その結果、脳のセロトニンのターンオーバーは冬に最も低く、さらにその値は、その時期の明るい日光を浴びた時間の長さと直接関連していたのです。

※この研究は健康なボランティアを対象とした観察研究で、「日光→セロトニン」の因果を証明したものではありません。季節性うつの方で同じことが起きているかも、著者自身が「分からない」としています。それでも、日照が脳のセロトニン系に影響しうることを示した、象徴的な報告です。

光は「目」から脳へ―体内時計の親時計につながる経路

医師の説明

目の網膜には、ものを見るための細胞(錐体・杆体)とは別に、メラノプシンという光センサーをもつ「内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)」が存在します。

2000年代初めに発見されたこの細胞は、特に青〜青緑の光(波長480nm前後)に敏感で、「いま外が明るいか」という情報を脳に送ります。

この信号が届く先が、視床下部にある視交叉上核(SCN)。全身の細胞にある「子時計」を束ねる体内時計の親時計です。

さらに光の情報は、セロトニン神経の細胞体が集まる縫線核などにも影響を及ぼすと考えられています(詳しい仕組みは研究が進行中です)。

視交叉上核(SCN)とは?―体内時計の「親時計」

視交叉上核と体内時計名前の由来は、左右の視神経が交差する「視交叉」の真上にある神経核だからです。視床下部にあり、ヒトでも米粒より小さな領域です。目からの光の信号を直接受け取る位置にあるため、「いま外が明るいか暗いか」を体内時計に伝える窓口になっています。

SCNが親時計であることは、動物実験で示されてきました。

• SCNを壊すと、睡眠と覚醒やホルモン分泌などの日内リズムが失われる(1970年代の研究)
• SCNを壊した野生型ハムスターに、周期の短い変異ハムスターのSCNを移植すると、行動リズムの周期が提供した側のものになる(Ralph ら、Science 1990)

SCNの神経細胞は、時計遺伝子(Per、Cry、Clock、Bmal1 など)の働きによって、約24時間周期のリズムを自ら刻んでいます。この分子機構の解明は、2017年のノーベル生理学・医学賞の対象になりました。

時計は脳だけでなく、肝臓・心臓・筋肉・皮膚など全身の細胞にもあり(子時計)、SCNは光の情報をもとに、これらをそろえる指揮者の役割を担っています。なお、肝臓などの末梢時計は食事のタイミングの影響も受けるため、「朝の光」と「規則的な食事」の両方が、時計をそろえるカギになると考えられています。

セロトニンとメラトニンの関係

セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから、5-HTPを経て作られます。

夜になるとこのセロトニンが松果体でメラトニン(睡眠を促すホルモン)へと変換されます。つまり、日中のセロトニンと夜のメラトニンは、同じ材料から続く一本の流れです。

セロトニン、メラトニン合成経路

朝の光はメラトニンの分泌を止めて覚醒モードに切り替え、夜に向けた分泌のタイマーをスタートさせます。

なお、体内のセロトニンの約90%以上は腸に存在し、脳に存在するのはごくわずかです。セロトニンは血液脳関門を通過できないため、脳のセロトニンは脳の中で別に作られています。「日光で増えるのは、脳のセロトニン系」という点がポイントです。

ビタミンDとセロトニン合成の接点

Part1でご紹介したビタミンDは、実はセロトニンの合成にも関わる可能性が指摘されています。

脳のセロトニンは、トリプトファンから、律速酵素であるTPH2(トリプトファン水酸化酵素2)を経て作られます。

2014年にPatrickとAmesは、活性型ビタミンD(カルシトリオール)がTPH2遺伝子のビタミンD応答配列(VDRE)に作用して転写を活性化し、一方で血液脳関門の外では、別のVDREを介してTPH1の転写を抑える、というしくみを提案しました。

2015年にはKanekoらが、ヒトTPH2遺伝子の上流にあるVDREにビタミンD受容体が結合し、培養細胞でTPH2のmRNAが誘導されることを示しています。

※いずれも細胞実験や仮説提案の段階です。ヒトで「ビタミンDを補えばセロトニンが増え、気分が上がる」と確かめられたわけではありません。

日光は、次の2つの経路で働いていると整理できます。
• 目から入る光:体内時計(SCN)とセロトニン系に働きかける(今回のPart3)
• 皮膚が受ける紫外線(UVB):ビタミンDや光分解生成物を作る(Part1)

体内時計は、毎朝の光でリセットされている

ポイント

ヒトの体内時計の周期は、実は24時間ちょうどではなく、約24時間10分前後と、わずかに長いことが分かっています(1999年・Czeisler らの研究)。

このズレを毎朝リセットしているのが、朝の光です。

朝の光が不足すると、時計は少しずつ後ろにずれていきます。夜型化、寝つきの悪さ、朝のだるさの背景には、こうした「時計のズレ」が関わっている可能性があります。

体内時計は気分だけでなく、代謝とも結びついています。

米ノースウェスタン大学の研究(2014年)では、成人54人に1週間センサーを装着してもらい、光を浴びるタイミングを調べました。

すると、1日の明るい光の多くを午前中に浴びていた人ほどBMIが低い傾向があり、この関係は活動量・摂取カロリー・睡眠のタイミング・年齢・季節とは独立していました。

朝の光は、気分や睡眠だけでなく、からだ全体のリズムに関わっているようです。

※小規模な観察研究であり、メカニズムの解明にはさらなる研究が必要とされています。

8万人超のデータが示した「昼は明るく、夜は暗く」

メンタルヘルスとの関係を調べた大規模研究もあります。

2023年に『Nature Mental Health』に掲載された研究では、英国のUKバイオバンクに参加した約8万7,000人に1週間、手首に光センサーを付けてもらい、その後のメンタルヘルスの調査結果と照らし合わせています。

8万人データ朝と夜の光

  • 夜間の光が多い人ほど、うつ病・全般性不安障害・PTSD・双極性障害などのリスクが高い
  • 夜間の光とは独立して、日中の光が多い人ほど、うつ病・PTSDなどのリスクが低い
  • 年齢・活動量・睡眠の質・心血管代謝の健康状態などを調整しても、この傾向は変わらなかった

研究チームは「昼に光を求め、夜は光を避けることが、メンタルヘルスを広く改善するシンプルな非薬物的手段になりうる」と結論づけています。

ただし、これは一時点の関連を見た横断研究です。「気分が落ちて外に出なくなった」という逆方向の関係も否定できません。

光が原因と断定するのではなく、光のリズムとこころの状態は互いに影響し合っていると捉えるのが適切でしょう。

光のリズムと自律神経

朝と夜、自律神経

体内時計の親時計(SCN)がある視床下部は、自律神経やホルモン分泌をコントロールする司令塔でもあります。心拍、血圧、体温、ホルモンの分泌といったからだのリズムは、このSCNを中心にした時計によって整えられています。

一般に、朝は交感神経が優位になって活動モードへ、夜は副交感神経が優位になって休息モードへと切り替わります。

朝の光が不足し、夜の光が多い生活が続くと、このオンとオフのメリハリが弱まり、「疲れているのに眠れない」「だるいのに力が入らない」といった状態につながることがあります。

Part2でご紹介した血管・血圧のリズムも、この流れの一部です。

今日からできる「光の習慣」

  1. 回復起床後1〜2時間以内に、屋外で20〜30分:通勤・散歩・ベランダでの朝食でもOKです。曇りの日でも、屋外は室内の照明よりはるかに明るい環境です。
  2. サングラスなしで、ただし太陽は直視しない:空の明るさを目に入れるイメージで。
  3. 屋外に出られない日は窓際で:窓ガラス越しは紫外線が減りますが、光自体は届きます。朝食や仕事の席を窓際にしてみましょう。
  4. 猛暑の時期は早朝や夕方に:日中の強い日差しを無理に浴びる必要はありません。日焼け止めや日傘との併用もOKです。大切なのは、日照ゼロの生活を避けることです。
  5. 夜は光を落とす:就寝前の1〜2時間は照明を暗めの暖色系にして、スマホやPCの光も控えめに。
  6. 毎日できるだけ同じ時刻に:リズムは「習慣」で強くなります。

※気分の落ち込みや不眠が2週間以上続く、日常生活に支障がある場合は、セルフケアだけで抱え込まず、医療機関にご相談ください。また、高照度光療法は、双極性障害、網膜疾患、光過敏を起こす薬を服用中の方などは専門家の指導のもとで行う必要があります。

セルフケアと施術、「両輪」でリズムを整える

脳活セロトニン調律整体光の習慣は、体内時計を整える土台づくりです。

一方で、毎日の生活がデスクワーク中心だったり、肩・首まわりの緊張が強かったり、呼吸が浅くなっていたりすると、からだの側が「切り替わりにくい状態」になっていることがあります。

当院の脳活セロトニン調律整体は、からだの緊張や自律神経のバランスにアプローチし、「朝は目覚め、夜は休める」からだの切り替えをサポートする施術です。

朝の光というセルフケアと、からだ側の調整。この両輪がそろうことで、日々のリズムはより整いやすくなります。

「光を浴びる習慣を作っても、なんとなく不調が抜けない」「自分のリズムの乱れの原因を知りたい」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。

まとめ

まとめ

  1. 日光(明るい光)は、目を通して脳に届き、体内時計とセロトニン系に関わる
  2. 脳のセロトニンのターンオーバーは、日照時間と関連することが報告されている
  3. セロトニンは夜にメラトニンへつながり、昼と夜のリズムは一本の流れ
  4. 昼は明るく、夜は暗くという光のメリハリが、メンタルヘルスの土台になる
  5. 日光浴のシリーズを通じて:皮膚(光分解生成物・Part1)、血管(血圧・Part2)、脳(セロトニン・体内時計・Part3)。
    日光は全身のリズムをつなぐ存在

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あなたやご家族の健康を守るために
大阪市西成区玉出で自律神経や身体を整えて、しっかり働けるようにしたい方へ

日光浴のような日々のセルフケアは、体を整えるための大切な”片輪”です。

もう一方の”片輪”として、乱れた自律神経を直接整える施術(脳活セロトニン調律整体)で、内側からのコンディション調整もサポートしています。

夏からの生活習慣で自律神経の乱れを感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。

当院では、身体の不調を脳活セロトニン調律整体に加えて体の歪み矯正や栄養指導、運動指導、生活習慣や環境の改善も含めたサポートを大切にしています。

原因不明扱いされているかもしれない不調でお悩みの方も、ぜひご相談ください。

体質改善には時間がかかりますが、一緒に取り組んでいきましょう。

ご相談はお気軽に!

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参考文献

  1. Lambert GW, et al. Effect of sunlight and season on serotonin turnover in the brain. Lancet. 2002;360(9348):1840-1842.
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  5. Burns AC, et al. Day and night light exposure are associated with psychiatric disorders: an objective light study in >85,000 people. Nature Mental Health. 2023;1:853-862.
  6. Ralph MR, et al. Transplanted suprachiasmatic nucleus determines circadian period. Science. 1990;247:975-978.
  7. Patrick RP, Ames BN. Vitamin D hormone regulates serotonin synthesis. Part 1: relevance for autism. FASEB J. 2014;28(6):2398-2413.
  8. Kaneko I, et al. 1,25-Dihydroxyvitamin D regulates expression of the tryptophan hydroxylase 2 and leptin genes: implication for behavioral influences of vitamin D. FASEB J. 2015;29(9):4023-4035.

※ 本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。